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平成21年度町長施政方針演述

公開日 2009年03月04日

主要施策 第1 第2 第3 第4 第5 第6 第7


 

平成21年度葛巻町長施政方針演述(葛巻町議会3月定例会)

 本日、ここに第10回葛巻町議会定例会が開会されるに当たり、今後の町政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 アメリカに端を発した世界規模の金融・経済危機の広がりは、我が国の経済へも深刻な影響を及ぼしており、いま日本経済は未曾有の厳しい状況に直面しております。製造業を中心として輸出の急速な縮小により、消費や雇用情勢が急激に悪化しています。こうした景気の低迷は、遅からずわれわれ山村地域の経済や住民生活への影響として深刻さを増してくるものと思われます。
 私は、こうした厳しい状況においてこそ、危機を乗り越え、新たな活力の創造に向けて地域の総合力で積極果敢に困難に立ち向かうことが求められているものと考えます。
 最近、国においては、農林業と農山村をしっかりと支え、その再生と食糧自給率の向上を図るべきとする気運が高まってきており、農山村に追い風が吹き始めております。
 私は、こうした中、町としても雇用の創出や公共工事の早期発注など、地域の活性化や生活支援につながるよう補正予算、新年度予算と切れ目なく機動的に執行できるよう取り組んでまいります。定額給付金についても、町内経済への波及効果がより高いものとなるよう工夫しながら早期支給に向けて準備を進めているところであります。
 今年は、丑年です。東北一の酪農の町、葛巻にふさわしい干支であると思います。牛の歩みのごとく一歩一歩着実に前進し、町民の皆様が「住み続けたい町」、「誇りを持てる町」と思える夢のあるまちづくりの実現に向け、議員各位並びに町民の皆様と力を合わせて町政運営に取り組んでまいる所存であります。
 これより「まちづくりの重点施策」、「行政改革の推進」及び「予算編成」の3点について申し上げます。


【まちづくりの重点施策】

 はじめに、21年度におけるまちづくりの重点施策について申し上げます。
 21年度におきましては、新年度予算と、国の第2次補正予算で創設された「地域活性化・生活対策臨時交付金」を活用した20年度の繰越事業とを切れ目なく実施し、総合計画が掲げる「地域の資源を宝に変えて幸せを実感できる高原文化の町づくり」の実現に向けて取り組んでまいる考えであります。
 その具体的な取り組みとしては、町総合計画の後期基本計画に掲げた重点プロジェクトの推進であります。
 地域イントラネット事業と地上デジタル放送の受信基盤整備のための実施設計を行い、総合的な情報通信基盤整備を進め、第一の安心あるまちづくりプロジェクトを推進してまいります。
 第二の活力あるまちづくりに向けた交流・定住人口の拡大のプロジェクトでは、子ども農山漁村交流プロジェクトによる教育旅行の受け入れ等に対応していくため新たに交流体験施設を整備するとともに、中心市街地の活性化に向けて、商工会を中心とした「まちなか活性化協議会」の取り組みを引き続き支援し、中心部の賑わいの創出を図ってまいります。また、これと併せて、移住希望者に対する土地取得の助成などの新たな支援制度を創設し、定住人口の拡大に努めてまいります。
 第三の魅力あるまちづくりに向けた環境・新エネルギー推進のプロジェクトでは、町森林組合が実施する低コスト施業による安全で効率的な林業の実現に向けた高性能林業機械の導入に助成し、森林の適正管理と町産材の利用促進を図ってまいります。
 このほか主要事業としては、葛巻病院の医師確保に向けて、総合医療情報システムと医師住宅を整備してまいります。生活環境の整備では、西部簡易水道統合整備事業が21年度完了見込みであります。
 産業振興では、昨年の原油価格や農業資材等の高騰に対応した支援策をいち早く打ち出し、酪農家の経営が安定するよう支援してまいりましたが、21年度も引き続き実施してまいります。
 なお、全般的に公共施設の老朽化が進んでいることから、改修・改築等に向けた財源確保のため、新たに基金を設置して今後の公共施設整備の需要に対処してまいります。


【行政改革の推進】

 次に行政改革の推進について、申し上げます。
 17年度から推進している「第4次行政改革大綱及び行政改革推進実施計画」については、21年度が最終年度となっております。職員数を21%、地方債残高を30%削減するという県下でも最も厳しい目標を設定した集中改革プランでもあります。おおむね所期の目標を達成できるものと考えております。
 また、22年度以降につきましても現計画の成果を検証しながら、本年度に行財政審議会でご審議をいただき、国の動向も踏まえつつそのあり方を検討してまいります。
 今後とも自立可能な行財政基盤の確立に向けて、行政改革に取り組んでまいります。このためには、職員の意識改革など資質の向上が不可欠であることから、長期の職員研修を充実させるとともに職員研修メニュー全体の見直しを進めてまいります。県への職員派遣研修を継続するとともに、新たに滞納整理事務の向上を図るため岩手県地方税特別滞納整理機構へ職員を派遣するほか職員の人事交流についても検討し、職員研修の充実を図ってまいります。


【予算編成】

 次に、平成21年度の予算編成について申し上げます。
 予算編成に当たっては、財政運営の健全化を推進するため、引き続き、歳出の抑制に努めるとともに、限られた財源の重点的かつ効果的な配分に努め、歳入に見合った歳出予算の編成を基本としたところであります。
 また、20年度の繰越事業となる「地域活性化・生活対策臨時交付金」の活用に当たっては、財源の効果的な活用を図るため、直面する町政課題から優先順位を判断した上で実施事業を選択し、実質的には21年度予算としての位置づけに主眼を置いた予算編成を行ったところであります。
 21年度の一般会計当初予算案については、総額を45億8,736万円と定め、前年度当初予算を2億3,030万円、4.8%下回るものとなりました。
 しかしながら「地域活性化・生活対策臨時交付金」等を財源とする20年度の繰越事業として、投資的経費3億3,700万円を補正予算に措置したところであり、これにより一般会計当初予算案に繰越事業を加えた実質的な21年度の予算総額は49億2,436万円となり、前年度当初予算を1億670万円、2.2%上回るものであります。積極型の予算編成ができたものと考えております。
 以下、予算案の主な特徴を申し上げます。
 まず、歳入でありますが、町税については、町民税及び固定資産税の減を見込み、前年度比5.3%減の4億8,425万としています。
 地方交付税については、28億8,000万円とし、国の地方財政計画における基本方針や前年度実績を踏まえ、前年度より8,000万円増額としています。
 町債については、前年度比39.9%減の総額3億440万円を計上しました。このうち臨時財政対策債を除いた普通建設事業費に充当する起債は、1億3,940万円に抑制したところであります。
 次に歳出でありますが、消費的経費については、人件費を前年度とほぼ同額の9億8,127万円、公債費を前年度比5.2%減の9億9,037万円、補助費を同11.8%増の7億4,980万円、扶助費を同6.9%減の2億2,823万円としました。
 投資的経費については、緊急性や財源などの視点から事業の事前評価を行い、総合的に優先順位を判断した上で、前年度比50.3%減の3億6,225万円を計上したところであります。これに繰越事業分を加えると6億9,925万円となり、ほぼ前年度並みの事業量を確保できたこととなります。
 なお、前年度に引き続き、財政調整基金及び減債基金からの繰入(取り崩し)は行っていないところです。
 特別会計については、西部簡易水道統合整備事業が最終年度となる簡易水道会計の事業費の減により、特別会計の総額は、前年度比2億705万円、7.4%減の25億9,859万円であります。
 なお、一般会計からの繰出金の総額は、病院事業会計への経営安定化対策費及び資産購入費の計上などにより、前年度を8,481万円上回る5億656万円となっています。各会計とも財政上の課題を抱えていることから、一層、独立採算による事業運営に努力してまいる考えであります。
 次に、町総合計画の体系ごとに施策の概要について申し上げます。


第1は「健康で快適に暮らせるまちづくり」についてであります。

 健康づくりの推進については「健康くずまき21プラン」の計画に基づいた町民の健康づくりを推進するとともに、新たに、食育の推進指針となる食育推進計画を策定します。併せて健康の基本となる食生活や食文化の普及・啓発を図るため高校生の食育講習会を始め、各年代に応じた食育指導や各種教室を積極的に開催し、食育の推進に努めてまいります。
 今年度から妊婦の経済的負担の軽減と少子化対策のため妊婦健康診査公費負担を一人14回に拡大し、母子保健事業の充実強化を図るとともに、不妊で悩む夫婦への不妊治療費助成や相談についても引き続き実施してまいります。「自分の健康は、自分でつくる」という意識の高揚を図るため、乳幼児から高齢者までの生活習慣病予防に重点をおいた各種健康診査、健康相談及び健康教育を実施し、引き続き特定健診・特定保健指導に取り組んでまいります。
 また、自殺予防対策のため、関係機関との連携を密にし、健康づくり講演会の開催や住民サポーターの養成などを通じて、自殺の現状や予防に関する知識の普及・啓発に努めるとともに、相談体制の充実を図ってまいります。
 病院経営については、多くの自治体病院が抱える医師不足の解消を最重要課題として捉え、関係機関と連携をとりながら医師確保に全力を傾注してまいります。医師確保には、診療体制を含めた良好な勤務環境の整備が不可欠であることから、総合医療情報システム(電子カルテ)導入や医師住宅2棟の整備を進め、地域医療の安定的確保を図ってまいります。このため、一般会計からの繰出金の拡充など、支援を強化してまいります。
 診療報酬改定や患者数の減少、医師不足等病院経営を取り巻く課題は山積していますが、公立病院改革プランを基に、今こそ地域医療の中核施設として住民の生命と健康を守る病院の使命を肝に銘じ、町民から信頼される安全な医療の提供と経営健全化に努めてまいります。
 国民健康保健事業については、国民健康保険制度は町民の多くが加入しており、安心して医療サービスが受けられるよう制度の充実と健全な運営に努めてまいります。国保財政健全化及び税負担の公平性を確保するために町税特別徴収対策本部が中心となり、国保税の収納率向上に努めてまいります。
 20年度にスタートした後期高齢者医療制度は、保険料の納付方法の改正など、制度の見直しが行われています。年々加入者の増加が想定されており、適切に制度改正などの情報を提供し、岩手県後期高齢者医療広域連合と連携しながら制度の充実と加入者の理解が深まるよう努めてまいります。
 通院バスの運行については、町中心部やその他の地域に、町の通院バスを運行するとともに、JRバス及び民間タクシーに委託運行し、引き続き通院利用者の利便性に配慮した輸送サービスに努めてまいります。
 地域福祉については、社会福祉協議会を始め、自治会、各関係機関や団体等との連携・協力により、その推進に努めているところであります。「地域福祉計画」と社会福祉協議会が策定する「地域福祉活動計画」に基づき、共に支え合う地域ぐるみの福祉を一層推進してまいります。
 高齢者福祉については、20年度策定の「高齢者健康福祉計画」に基づき、生きがいと健康づくり、介護予防に努めるとともに、認知症高齢者が安心して生活できるよう、認知症サポーター養成講座を開催してまいります。
 介護保険事業については、高齢化率が36%を超える本町においては、地域包括支援センターの適切な運営に努め、介護保険事業を運営する盛岡北部行政事務組合の「第4期介護保険事業計画」や町の「高齢者健康福祉計画」に基づき、介護予防事業を始めとする各種高齢者支援施策を推進してまいります。
 障害者福祉については「障がい福祉計画」に基づき、障害を持つ人も地域で安心して生活できるよう、国の動向を踏まえながら施策の積極的な推進に努めるとともに、障害者福祉を一層推進してまいります。
 また、地域活動支援センター「すずらん工房」の改修について助成するとともに、引き続きその運営について支援してまいります。
 子育て環境の充実については、安心し子育てと働くことができる環境づくりを推進するため「子育て支援計画」に基づき、乳児保育、延長保育、一時保育及び放課後児童保育を行うとともに、児童福祉施設の適正配置について引き続き検討してまいります。21年度には「子育て支援計画」の見直しを行い、子育て環境の充実をより一層推進してまいります。
 また、保育料の軽減を継続し、保護者の負担軽減を図るほか、各保育所の改修を行います。
 住宅の耐震化の推進については、安全安心な住宅で生活ができるよう、耐震化の必要性について啓発し、簡易耐震診断化率の向上に努めてまいります。 
 町営住宅については、全戸に火災警報器を設置するとともに、町営堀の内住宅の通路や駐車スペースを整備し、入居者の安全確保を図ります。
 水道事業については、17年度から整備を進めてきた西部簡易水道統合整備事業が本年度をもって完了し、最新の膜ろ過設備を備えていることから、安全で安定した飲料水の供給が図られるものです。他の施設についても計画的に整備を進めてまいります。
 下水道事業については、農業集落排水施設及び町整備型浄化槽の普及率の向上に努めてまいります。


第2は「地域で支え合うまちづくり」についてであります。

 消防防災については、現在工事を進めている地域イントラネット基盤整備事業による屋外告知端末等を活用し、サイレンや火災情報の屋外告知など災害情報の即時提供等に努めるとともに、町、消防団及び盛岡中央消防署葛巻分署が連携し、自主防災組織の育成を図りながら町民の防災意識の高揚と災害に強いまちづくりに努めてまいります。引き続き、婦人消防協力隊と連携し住宅用火災警報装置の普及に取り組んでまいります。
 消防設備の整備については、第14分団及び第18分団消防ポンプ積載車の更新と第9分団小型動力ポンプの更新並びに防火水槽の整備を進めるとともに、第12分団屯所建設に対し助成してまいります。
 防犯・交通安全については、本町は昨年一年間で「犯罪認知件数」ゼロという異例の記録を達成できましたが、これは関係各位のご尽力によるものと感謝を申し上げます。引き続き、防犯指導隊、防犯協会など関係団体と連携して防犯活動を推進するとともに、交通指導隊を中心に高齢者への交通指導、子供たちへの交通安全教育などの交通事故防止の推進を図り、地域を挙げて安全で安心なまちづくりに努めてまいります。


第3は「環境を守り育てるまちづくり」についてであります。

 一般廃棄物処理については、ごみの再資源化と減量化を推進し、併せてリサイクル活動団体に支援してまいります。
 また、21年度から盛岡広域圏での一般廃棄物処理施設建設に向けた調査事業実施のための負担金を措置しました。早期の建設に向けた取り組みを進めてまいります。
 マイマイガの対策については、昨年10月に各自治会の皆様の協力をいただき全町的に卵塊のかき取り作戦を実施しましたが、春には幼虫の大発生も想定されます。防除薬剤配布などの防除対策経費を予算措置したところであり、適時適切に対処し発生の抑制に努めてまいります。
 地域エネルギーの活用については、町独自の新エネルギー導入支援事業を継続し、太陽光発電設備や薪・ペレットストーブの普及拡大のため、支援策を講じてまいります。木質バイオマスガス化発電施設は、町が譲り受けてバイオマスエネルギー利用施設として今後も有効活用してまいります。また、日本一の新エネルギーの町として視察等の受け入れを始め、情報発信に努めてまいります。


第4は「資源を生かした産業を推進するまちづくり」であります。

 農業全般については、昨年の原油、農業用生産資材等の価格高騰は、生産コストを上昇させ、さらに世界的な景気後退や円高の影響により、農産物をめぐる消費、輸出の動向などが下降局面となっていて、これまでに無い危機的な状況に追い込まれています。農業を取り巻く情勢が大きく変化しさまざまな課題に直面しています。
 このことから、国の制度資金や20年度に創設した農業資材・飼料等価格高騰緊急対策資金に利子補給を行いながら、経営感覚に優れた農業経営体や担い手農家を引き続き育成するとともに、主業型農家と小規模・兼業農家がそれぞれ役割分担のもと、農業の経営が将来にわたって持続可能となる低コストな生産構造への転換と総合的な技術・経営支援の強化を図ってまいります。
 農地の利用については、昨今の農業情勢にかんがみても、地域農業の振興を図る観点からも、優良農地の確保及び耕作放棄地の発生防止は重要であります。担い手への面的集積を促進するとともに耕作放棄地の解消に向け、農地パトロールの強化や農地の重要性について意識高揚のための啓発活動を実施してまいります。
 また、農業者の老後の生活安定と福祉向上のため農業者年金制度の普及と加入推進を強化するとともに、家族の役割分担を明確にした家族経営協定の締結などの促進に努めてまいります。
 園芸の振興については、多様化する販売対策と新規作目への積極的な取り組みにより消費者に期待される産地化を推進するため「いわて希望農業担い手応援事業」及び「葛巻型農業構築支援事業」を実施してまいります。
 さらに、消費者との交流、農林産物の販売を推進するため、特産品直売所等の整備に助成してまいります。
 農山村活性化については、学ぶ意欲や自立心、おもいやりの心、規範意識などを育み、力強い子どもの成長を支える教育活動として「子ども農山漁村交流プロジェクト(小学校において農山漁村での一週間程度の長期宿泊体験活動)」を農林水産省、文部科学省、総務省が連携して推進しております。
 くずまき高原牧場が、全国50カ所の一つとしてモデル地域に指定された利点を生かして、都市と農山漁村の共生・交流を促進するため「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金事業」により、農林漁業体験交流施設を整備してまいります。
 水田営農については、地域の作物振興、水田の利活用、担い手の育成等の将来方向を明確化した地域水田農業ビジョンを作成しており、創意工夫を生かした取り組みを実施できるよう、引き続き「葛巻町水田農業推進協議会」と連携して、水稲の生産調整拡大部分や調整水田等不作地を最大限に活用した、飼料作物等の生産拡大を支援し、産地づくりを推進してまいります。
 畜産振興については、飼料価格や農業生産資材の高騰によって、かつて経験したことのない危機的状況が続いており、乳価の引き上げが実施されても、なお、酪農家の経営状況は厳しいことから、20年度から農業生産資材・飼料価格高騰対策として実施したデントコーン種子助成事業、育成牛預託助成事業、畜産酪農生産性向上対策推進事業を引き続き実施してまいります。
 乳用牛対策では、乳質改善事業の拡充を図るとともに、新規事業として松村牧場で生産され岩手県で初めて全国に凍結精液を提供する種雄牛として選ばれたパインツリー・リョウ・エボニーの産子の増殖を図るため精液購入経費に助成する優良乳用牛生産対策事業を実施してまいります。
 肉用牛対策では、町内の繁殖素牛を1千頭まで増頭するという計画を実現するため、引き続き黒毛和種増頭対策助成事業を実施してまいります。
 さらに、畜産経営を支援するため、新たに土壌分析、飼料分析、堆肥分析を進め、効率的な施肥によって、良質な粗飼料生産と肥料の低減化が行われるよう支援に努めてまいります。
 生産基盤の整備については「一般農道江刈中部3期地区」及び「中山間地域総合整備事業江刈地区」の県営事業による調査を継続し、新規採択に向け国、県に強く要望してまいります。
 林業振興については、町森林組合と連携し、植樹祭、森林(もり)の恵みフォーラム、薪フェスタなどのイベントを通して森林保全と豊かな森林の恵みを内外に向けて情報発信し、林業、森林への理解が深まるようその重要性を訴えてまいります。また、町森林組合が導入する高性能林業機械に助成し、森林の適正管理と町産材の利用促進を図ってまいります。
 林道整備については、県代行林道「鈴峠Ⅰ号線、畑福線」が事業継続中であり、「鈴峠2号線」は本年度調査設計に着手する見込みです。
 また、緑資源機構から県に引き継がれた「山のみち地域づくり交付金事業」による「安孫・平糠線」の早期完成と「鷹ノ巣・鰻沢線」の早期着工に向け要望してまいります。
 治山事業については、下冬部の山腹崩壊の復旧工事は平成20年度で完了し、七滝、触沢及び岩瀬張地区の谷止工事は継続して実施となります。昨年7月の災害で被害のあった田屋地区の谷止工事の新規着工が計画されております。
 商工業の振興については、商工会が中心となって組織している「まちなか活性化協議会」による中心市街地でのイベント開催を支援し、中心市街地の活性化に取り組むとともに、盛岡広域市町村で組織する盛岡地域産業活性化協議会等と連携して、情報収集を図りながら製造業等を中心とした企業誘致に取り組んでまいります。
 観光産業については、子ども農山漁村交流プロジェクト等による体験教育旅行の受け入れを推進するため、ニュー・ツーリズムの拠点となる交流体験施設を新たに整備するとともに、昨年5月にオープンした平庭高原のいわて体験交流施設「森のこだま館」を活用して、新たな魅力ある体験滞在型観光を創出してまいります。
 定住対策については、農家等のご協力をいただきながら土地提供者を登録する制度を設け、土地取得者や若者定住者に対する各種の支援制度を創設してまいります。
 また、町ぐるみでの定住者の受入体制を整備するため、すでに体験・受け入れ事業に取り組んでいる第三セクターや林業関係団体等と連携しながら、全町的な受け入れ態勢の強化に取り組んでまいります。


第5は「人と文化を育むまちづくり」についてであります。

 教育の充実については、私は、次世代を担う本町の子どもたちには、大いなる夢と希望を持ち、明るくたくましく成長してほしいと願っております。
 そのために、幼児教育の推進、小中学校教育の充実、地域の高等学校の存続発展など教育環境整備に取り組んでまいります。
 幼児教育の重要性を踏まえ、引き続き私立幼稚園に対し運営費を助成するとともに、私立幼稚園入園児の保護者負担を軽減するため就園奨励費補助金を交付し、心情・意欲・態度などをバランスよく育む就学前教育の推進を図ってまいります。
 小中学校教育では、自然環境や産業構造とその従事者など地域の総合的な資源を生かした体験学習を積極的に学校教育の中に取り入れてまいります。
 同時に、教育環境整備も重要であり今年度は、22年度に予定する葛巻小学校屋内運動場改築工事に向けた実施設計作成に着手し、葛巻中学校グランド整備工事、スクールバス2台の更新などを行います。
 高等学校教育の振興については、今後とも葛巻高等学校教育振興協議会に対して補助金を交付し、通学補助制度をはじめ特色ある活動などを助成することにより、魅力ある学校づくりを支援しながらその存続発展に展望を切り開いてまいります。また、今年度は葛巻高等学校郷土芸能部が全国高等学校総合文化祭に出場しますので、その出場経費を助成して活躍を期待するものです。
 生涯学習の充実については、さまざまな分野に係わることから生涯学習本部を中心に全庁的な体制で推進し「町民まなびい学園」を開設して町民の皆様の多様な学習要望にお応えしてまいります。
 青少年の健全育成については、町青少年育成ネットワーク等との連携強化、くずまき高原牧場における子ども長期自然体験村等の体験活動の奨励と支援、姉妹町村である沖縄県北中城村への中学生派遣交流を進めてまいります。
 生涯スポーツ・レクリエーションの推進については、昨年創立50周年を迎えたNPO法人葛巻町体育協会と加盟する種目別協会がさらに発展するために活動しやすい環境整備に努めてまいります。朝晩、ウオーキング、ジョギングをする町民の方を多く見かけますが、「歩く健康づくり・走る健康づくり」は大変よいことだと感じます。全ての町民がスポーツやレクリェーションに親しむことができるように、町民総合体育大会等各種大会を開催してまいります。
 文化の創造と継承については、より多くの町民の皆様から日常生活の中に文化活動を取り入れていただき、日々進化発展する文化を身近に感じていただくことによりその創造と継承につなげてまいります。
 文化財保護活動では、昨年実施した「車門明神穴遺跡」調査を継続実施し、その特徴、地域の貴重な財産としての位置づけなど今後の活用策を検討します。


第6は「交流を広げ、誇りをもって情報発信するまちづくり」であります。

 国・県道整備については、均衡ある地域社会の形成と交流、連携、相互補完を促進するための道路整備を国・県に対して引き続き要望してまいります。
 国道281号では、通常の維持修繕工事のほか、葛巻地区流雪溝の補修継続、小屋瀬地区の道路災害防除工事が、国道340号では、道路維持修繕が、主要地方道一戸葛巻線では、田部地区の道路災害防除工事が予定されております。
 平庭道路の整備については「平庭トンネル早期着工・完成促進住民大会」の継続開催を含め関係する市町村とともに、引き続き早期実現に向けて要望してまいります。
 町道については、町民の皆様と連携を図り、豊かな生活環境の創造と地域の活性化を推進するため、田子星野線、松ヶ沢線を継続工事とし早期完了に努めてまいります。また、新規路線として毛頭沢線、渋谷地線、辰鼻線、野中線、町裏線の整備に着手します。
 なお、橋りょうの長寿命化修繕計画を策定し、計画的な修繕を進め、橋りょうの適切な管理に努めてまいります。
 災害復旧については、甚大な被害を受けた元町川をはじめ、全ての復旧事業が20年度をもって完了したことをご報告申し上げます。今後も災害に強い町づくりを推進してまいります。
 バス交通対策については、葛巻線、吉ヶ沢線の2路線の広域生活路線について、県補助金を活用し、関係町村と連携して引き続き路線の維持に努めるとともに、バスの利用促進を図るため、各種イベント等での利用促進の取り組みを推進してまいります。
 地域情報化については、20年度に整備した地域イントラネット基盤の充実を図るため、屋外告知端末を11カ所、保育園などの公共施設への光ファイバ接続6カ所を追加整備するほか、地上デジタル放送への完全移行、ブロードバンド・ゼロ地域の解消に向け、町民の皆様への周知と加入意向の集約、基盤整備にかかる実施設計などを進めてまいります。
 また、世帯数で1割未満となった携帯電話不感地域の解消についても、引き続き関係機関等へ働き掛け、すべての町民が高度情報化社会の利便性を享受できる情報化基盤の充実に努めてまいります。


第7は「協働のまちづくり」であります。

 住民参画については、20年度創設した地域で助け合う「結い」の再生事業を柱とした協働のまちづくり事業を継続して、ひと・地域・まちの魅力を一層高める自主的・主体的な活動を支援してまいります。また、地域担当職員による行政情報の提供や審議会等への公募枠の設置、町政懇談会を開催し、まちづくりへの参画機会の拡充を図りながら、地域と行政の協働を推進してまいります。
【結びに】
 以上、21年度の施策の概要を申し上げました。
 今回の世界的な不況は、百年に一度のものといわれており、国際的にも国内的にも非常に困難な社会経済情勢にあることから、町政を取り巻く環境は、ますます厳しくなることが予想されます。しかし、“ピンチは大きく伸びるチャンス”でもあります。
 今後は、ますます農山村の自然、その自然が育む食、あるいは先人から受け継がれてきた自然と共生する術(すべ)への価値感が高まり、農山村の存在が見直される時代になるものと確信しております。
 こうした時代背景を踏まえ、お互いが助け合い世代間で支え合いながら、私たちの先人が残してくれた美しい豊かな自然という貴重な財産(資源)を最大限に生かした循環型の地域社会の構築をまちづくりの基本的方向として念頭に置き、町民の皆様が「住み続けたいと思える町」、「誇りを持てる町」として山村のモデルとなりうる町づくりを目指してまいります。
 このため、私は、時代の動向や町の将来を見据えながら、町民のニーズを的確に捉え、議員各位並びに町民の皆様とのコミュニケーションを大切にし、施策を推進してまいります。
 ここにおられる議員各位並びに町民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

  平成21年3月4日
  葛巻町長 鈴木 重男

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